児童書・YA・ライトノベル・ジュニア小説など、子ども〜10代向けの本のレビューをデリバリーします。児童書ブロガー、学校図書館司書、本好きな子ども、子ども本好きな大人などが、おすすめ本を紹介します。
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5/16 5月の新刊情報up!
5/1 『夢の彼方への旅』レビューup!
4/23 『クレヨン王国の12か月』レビューup!
4/19 4月の新刊情報up!
4/10 『ピース・ヴィレッジ』レビューup!
3/23 3月後半の新刊情報up
3/17 3月前半の新刊情報up
3/13 『鉄のしぶきがはねる』レビューup!
2/27 『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』レビューup!
2/23 『盗まれたおとぎ話』レビューup!
2/15 2月の新刊情報up
2/2 『くちびるに歌を』レビューup!
1/15 電子書籍「ライトノベル化する児童文学」公開しました
1/15 1月の新刊情報up
火
01
5月
2012
夢の彼方への旅
著者はエヴァ・イボットソンさん
出版社は偕成社です。
イボットソンさんの作品は
アレックスとゆうれいたち
幽霊派遣会社
を過去記事で紹介しています。
今まで紹介したイボットソン作品2冊は幽霊モノでしたが
この「夢の彼方への旅」は全然テーマが違います。
YAと児童書の中間くらいな作品なので
どちらにするか悩んだ後、本の厚さや文字の大きさなどでYAにしました。
舞台になるアマゾン。
このエキゾティックさに反応するか、しないか。
主人公のマイアは反応しました。彼女は図書館の本でこんな記述を見つけます。(以下「 」内、本文より抜粋)
「アマゾンを緑の地獄だと思いこんでいれば、このすばらしい土地に恐怖と偏見を持ちこむだけである。その場所が、地獄になるか楽園になるかは、あなたしだいなのだ。勇気とひらかれたココロを持ってその地にのぞむ人は、かならずそこに楽園を見いだすことだろう」
マイアは楽園を見いだすことを決意しました。
学園の他の子たちは、同じようにアマゾンについて調べても
怖ろしい場所であるという記述しか見つけられませんでした。
これをね
『どんな場所にでも共通すること』
ってくくっちゃうことはわりとカンタンかな…と思います。
抜粋しながらそんなふうにまとめそうにもなりましたしね。
でも
それより強く
この本で伝えたいのは
アマゾンという場所への憧れ
なんです。
反応する場所って、人によって様々です。
たとえば、先日紹介した『少年』の著者、ロアルド・ダールさんはアフリカに憧れてルンルンで赴任しましたし
オンム・セティことドロシー・ルイーズ・イーディーさんは幼いころからエジプトに焦がれるように想いを馳せて移住しました。
そして
マイアと家庭教師のミントン先生は
アマゾンに魅せられ、その自然の中で過ごしたかったのです。
実際のところ
マイアをひきとった親戚の人たちは
アマゾンに魅せられた人々ではなかったので
彼女たちはなかなかに苦労します。
策を練り、実行するのはミントン先生。
でも、それをマイアに事前に知らせることはしません。
水くさい?
いいえ、なにかあったときにマイアを守るには
あんまりいろんなことを知らせない方がいいからです。
大事な部分に来たときは、ちゃんと打ち明けていますしね。
このミントン先生がすごく頼もしくて
安心して読める大きな要素になっています。
奇妙な風習や奇妙な人に出会ったときに「大丈夫」って思える人がいるって
現実でも、本の中でも安心できるものですね。
しかし
このミントン先生
アマゾン行きの船あたりから、なんとなく
タダモノではない雰囲気がありまして
アマゾンでは一筋縄ではいかないかっちょよさを発揮。
<しなくてはいけないこと>と<自分で自由の道を選ばせる>ことを両立させようとするなんて
そんじょそこらの女性では考えつきもしないでしょう。
こんなふうにまっとうでありながら冒険心あふれる大人が見守ってくれるのですから
周囲の環境がちょっとくらいアレでも、道は見つかるというものです!
この本には、マイアを中心とするメインの物語があり
それより一世代前のサイドストーリーがあります。
そのサイドストーリーで重要な役割を果たしていたのが、このミントン先生なのでした。
メインの物語も、実をいうとアマゾンのストーリーとイギリスのストーリーがあり
こんなふうに書くとごちゃごちゃしているように思われそうなんですが
読んでみるとそれぞれの絡みかたもわかりやすいものですから
読みにくさはないはずです。
ワタシ、こういういろんなストーリーが伏線的に起きて、絡んではまる物語、好きなんですよねぇ♪
この『はまる』感は
物語でいうところの『自分の居場所』と共通するものがあるでしょうね。
月
23
4月
2012
クレヨン王国の十二か月
シルバー王妃は、それぞれの町で散らかし癖・偏食・自慢屋という数々の自身の欠点と向き合っていくのでした。十二ヶ月に渡る旅を通じ、お妃にふさわしい品格を備えることが出来たシルバー王妃は、再会したゴールデン国王の心を取り戻すことが出来たのでした。
この物語の最大の魅力は、十二あるクレヨンの町の描写にあります。ピンク色・水色・灰色と、町を治める大臣たちの色に染められた町はそれぞれに十二ヶ月季節を持っています。ユカとシルバー王妃が、町の持つ色と季節に合わせた洋服に着替え、旅する様子が彩り豊かな表現で綴られ、読者の心をワクワクさせてくれます。
クレヨン大臣たちをはじめ、クレヨンの町に住む住民達もユニークなキャラクターを持っており、王妃が欠点を克服するなかでの手助けをしてくれます。中でも、王妃の欠点を鏡合わせのように持つ登場人物たちの存在は、「人のふり見て我がふり直せ」という教訓を唱っているような気がします。
(ばーまー)
火
10
4月
2012
ピース・ヴィレッジ
主人公は、米軍基地のある町に住む小学6年生の楓。アメリカ人兵士やインド人の店員など外国人がまわりにたくさんいて、お父さんが経営するスナックも米軍相手の店。お母さんの妹は料理家らしいけれど、ふらっとどこかへ出て行って帰ってきません。親友紀理ちゃんのお父さんは活動家で、一人反戦のビラを撒いていて、入院したお父さんの代わりに、中1の紀理ちゃんもビラ配りをするといいます。
楓はテレビの戦争の場面が怖くて夢にまで出てきて、いつ起こるかと思うと不安で仕方がないのですが、お母さんには「起きやしないって」といなされます。
そんな様々なことを、子どもの楓はフラットに体験し、無意識のうちに自我に影響を受けている様子がわかります。善悪や優先順位など大人の論理ではなく、自分自身が感じることを、時間をかけて表現していく過程が描かれていて、読む方もじっくり向き合うことを求められる物語でした。
(makio)
『ピース・ヴィレッジ』
岩瀬成子著
偕成社 2011年10月
月
12
3月
2012
鉄のしぶきがはねる
第27回坪田譲治文学賞受賞作品です。
前回の受賞作、佐川光晴『おれのおばさん』は児童養護施設が舞台でしたが、今回は工業高に通う、学科唯一の女子高校生が主役です。
なじみのない世界の作品は、それだけで新鮮で珍しいものを読む楽しみもありますが、そういえば子ども時代に読む本は、ほとんどが知らない世界の話で、珍しさを楽しむ読み方は、児童書を読んでいる感覚に近いのかも、と思います。
さてお話は、工業高校機械科1年、部活もコンピュータ研究部という理系女子、三郷心を中心に進みます。心の家は、おじいちゃんが興した金属工業の工場だったけれど、ある事件から廃業。それ以来、旋盤技術よりコンピュータが進んでいる、と信じています。しかし学校の「ものづくり研究部」に誘われ、旋盤作業をするうち、職人技の魅力に目覚め、先輩や仲間との関わりを深め、やがてものづくりコンテストをめざします。
工業高校に通う女子といえば、ドラマ化もされた、漫画『アスコーマーチ』があるので、ちょっと印象がかぶるかもしれませんが、この本の醍醐味は、旋盤技術の詳細な描写でしょう。100分の1ミリを争う技術、用具や技術の名称、削り出す音や手に伝わる感触など、読みながら追体験しているようで、オタク的感覚がめばえてくる気がします。その分、人物の内面や、恋愛の部分に関しては少々手薄に思えましたが。
同級生の男の子の、技術があるからこそのやんちゃないたずらや、それを鷹揚に受け止める先生のくだりが、小さなエピソードですが、かなり好きなパートでした。 (makio)
まはら三桃 著 講談社 2011年2月
月
27
2月
2012
ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち
古書や文学の部分は本好き、黒髪の眼鏡美女描写はラノベファン、舞台の鎌倉は大人女性、とそれぞれ読書対象が違うのでは、という気もしましたが、それぞれが濃すぎずほどよくブレンドされ、みんなが好きなミステリーを軸に話が進むので、誰からも好感が持たれるのかもしれません。そんな傾向のヒット作が最近多いですね。最近の児童新書にも通じる物があるかも。
そんなわけで人によって好きなポイントが違いそうですが、ティーンズが共感しそうなのは、女子高生が登場する第二話、「小山清『落ち穂広ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)」。恋愛に夢中な女子高生と、貴重な古書。相容れないものが出会い、起こした行動や、巻き込まれた人々と関わり変化していく様子が、さわやかです。
実際若者が古書にふれることはあまりないと思いますが(新古書でなく)、本がわざわざ「紙の本」と呼ばれるようになった今、スピン、アンカット、小口、初版本など、「紙の本」ならではの表現を楽しむ、という読み方もあるかもしれません。
(makio)
三上 延 著 メディアワークス文庫 2011年3月
木
23
2月
2012
盗まれたおとぎ話
トムの冒険には、おとぎ話の登場人物が物語の鍵を握る存在として現れ、手助けをしてくれます。りんごを食べて眠ったまま目を覚まさない黒髪のお姫様を守る小人達や「ヘンゼルとグレーテル」から飛び出してきたお菓子の家が物語を彩ります。それらのおとぎ話をもう1度読み直してから、本書を再び手に取れば更にまた楽しめそうです。
物語の挿絵は、イラストレータでもある作者イアン氏が自ら絵筆を執っています。影絵のような不思議な雰囲気の絵が物語にピッタリ合っていて、目を楽しませてくれます。
(ばーまー)
イアン・ベック著/松岡ハリス佑子翻訳(静山社)2012年1月

